リフォームを計画する際、私たちはどうしても「今の暮らし」を基準に、間取りや設備を考えがちです。「今の家族構成にとって、一番使いやすいキッチンはこれだ」「今の趣味を楽しむために、この部屋をこう変えたい」。その想いは、決して間違いではありません。しかし、もし、そのリフォーム計画の数年先に、家族のライフスタイルが大きく変わる可能性が見えているのであれば、そのリフォームは一度立ち止まり、「しないほうがいい」と判断する勇気が必要かもしれません。なぜなら、今の価値観だけで行ったリフォームが、未来の暮らしの「足かせ」になってしまう危険性があるからです。例えば、高校生の子供のために、多額の費用をかけて子供部屋を豪華な書斎スペースにリフォームしたとします。しかし、その子供が数年後には大学進学や就職で家を出てしまい、せっかくの部屋が空き部屋になってしまったらどうでしょうか。あるいは、夫婦二人だけの生活を想定して、キッチンをコンパクトでスタイリッシュなものにリフォームした直後に、親との同居が決まり、複数人で使うには手狭で不便なキッチンになってしまった、というケースも考えられます。他にも、今は元気な夫婦が、将来のバリアフリーを全く考慮せずにデザイン性重視のリフォームを行い、10年後に階段の上り下りや段差に苦労する、といったこともよくある話です。リフォームは、一度行ってしまうと、簡単には元に戻せません。ライフスタイルの大きな変化が予測できるのであれば、今は大規模なリフォームに踏み切るべき時ではないのです。その変化が実際に訪れ、新しい生活スタイルが固まってから、それに合わせてリフォームを行う方が、はるかに合理的で、満足度の高い結果に繋がります。今は、壁紙の張り替えや設備のクリーニングなど、比較的小規模なメンテナンスに留めておく。そして、来るべき未来のために、しっかりと予算を蓄えておく。それが、将来の自分と家族のためになる、賢明な判断と言えるでしょう。