賃貸マンションやアパートに住んでいて、ある日、壁にひび割れを発見したら、あなたはどうしますか。「退去時にバレなければいいか」「自分で補修してしまおう」などと安易に考えるのは、大きなトラブルの元です。賃貸物件は、あくまで「借り物」。そこには、持ち家とは異なる、守るべきルールと正しい対応手順が存在します。まず、ひび割れを発견したら、絶対に自己判断で補修などを行わず、何よりも先に「大家さん」または「管理会社」に連絡してください。これは、入居者の義務であり、トラブルを避けるための鉄則です。賃貸物件の壁や設備は、すべて大家さんの所有物です。それを無断で変更することは契約違反にあたり、もしDIY補修の仕上がりが悪ければ、退去時にかえって高額な原状回復費用を請求される原因にもなりかねません。発見したひび割れの場所、大きさ、いつ頃からあるかなどを、正直に、そして速やかに報告し、その後の対応について指示を仰ぎましょう。次に、多くの人が気になるのが、「補修費用の負担は誰がするのか」という問題です。これには明確なルールがあります。それは、ひび割れの原因が「経年劣化」によるものか、それとも「入居者の故意・過失」によるものか、という点です。建物の自然な収縮や、通常の生活の中で発生する軽微なひび割れなど、「経年劣化」が原因であれば、その補修費用は大家さんが負担するのが原則です。一方で、入居者が壁に物を強くぶつけてしまった、あるいは不適切な方法で重いものを吊るした結果、ひび割れが生じたなど、入居者の不注意、つまり「故意・過失」が原因である場合は、入居者がその費用を負担することになります。この判断は、最終的には大家さんや管理会社が行いますが、そのためにも、発見時点での誠実な報告が非常に重要になります。「いつの間にかできていた」のか、「自分の行動が原因かもしれない」のか。それを正直に伝えることが、信頼関係を損なわず、問題を円満に解決するための鍵となるのです。