団地リフォームを数多く手がける建築家に、限られた面積で豊かに暮らすための設計術について話を伺いました。スペシャリストによれば、団地の標準的な広さである50平方メートル前後という空間は、工夫次第で100平方メートルの住宅に匹敵する満足感を生み出せると言います。その秘訣の1つは、廊下という概念をなくすことです。古い団地の間取りは、玄関から各部屋へつながる廊下によって細かく分断されていますが、リフォームによって廊下をリビングの一部に取り込んだり、ウォークスルー型の収納に変えたりすることで、無駄なスペースを一切排除した効率的な動線が完成します。また、視線の抜けを意識した設計も重要です。ドアを開けた瞬間に窓の外の緑まで視線が通るように家具や壁を配置することで、実際の面積以上の開放感を演出できます。スペシャリストが特に強調したのは、収納の作り方です。団地はもともと押し入れという大容量の収納を備えていますが、これをそのまま使うのではなく、現代の生活用品に合わせたクローゼットやオープンシェルフに作り替えることで、室内をスッキリと保つことができます。さらに、壁や天井の仕上げにこだわることも大切です。コンクリートの質感をあえて活かした剥き出しの天井にすれば、天井高が数センチ上がり、インダストリアルな雰囲気を楽しむことができます。水回りについては、コンパクトながらも機能性の高い設備を選ぶことで、家事動線を劇的に改善できるとアドバイスしてくれました。インタビューの中で印象的だったのは、団地リフォームは引き算の美学だという言葉です。あれもこれもと詰め込むのではなく、自分にとって本当に必要なものだけを選び取り、余白を楽しむ心のゆとりが、団地という古い器を最高に輝かせるのだそうです。スペシャリストの手によって再生された団地は、古い素材と新しい感性が混ざり合い、住む人の個性が滲み出る唯一無二の場所へと変貌を遂げていました。
団地再生のスペシャリストに聞く空間活用の秘訣