建具職人として30年以上、数え切れないほどのリフォームドアの設置に携わってきましたが、この仕事の難しさと面白さは1つとして同じ現場がないことにあります。新築の現場とは異なり、リフォームの現場では建物自体に必ずと言っていいほど数ミリ単位の歪みが生じています。築20年、30年と経った家は、地盤の動きや木材の乾燥によって、開口部が完全な長方形ではなくなっていることがほとんどです。この歪みを無視して新しいドアをただ取り付けてしまうと、数ヶ月後には擦れが生じたり、鍵がかかりにくくなったりといった不具合が発生します。私たち職人が最も神経を使うのは、枠を水平垂直に据え付けるためのミリ単位の調整です。レーザー墨出し器を使いつつも、最終的には自分の目と手の感触で、扉が自重で勝手に開いたり閉まったりしない絶妙なバランスを探り出します。また、カバー工法で玄関ドアをリフォームする際には、既存の枠をいかにきれいに隠し、雨水の侵入を完璧に防ぐシーリングを施すかが腕の見せ所です。最近の製品は非常に高性能で、断熱性や気密性も格段に向上していますが、その性能を100パーセント発揮させるのは、やはり現場での丁寧な下地処理と正確な組み付けに他なりません。丁番のネジ1本の締め具合でさえ、将来の耐久性を左右します。お客様の中には、安さだけで業者を選ばれる方もいらっしゃいますが、ドアは10年から20年と毎日何度も使い続けるものです。万が一、取り付けが甘ければ、気密性が損なわれて冷暖房費が無駄になったり、防犯性能が低下したりするリスクがあります。私たちは単に建具を組み立てるだけでなく、その家で過ごす家族の安全と快適さを支えているのだという誇りを持ってヘラを握っています。工事が終わった後、お客様が新しいドアを動かしてその軽さと静かさに驚く瞬間が、職人として最大の喜びであり、仕事への情熱の源となります。リフォームは家と職人の対話であり、その対話が丁寧であればあるほど、家は長く、美しく、住む人を守り続けてくれるのです。妥協のない仕事こそが、本当の意味でお客様の大切な資産を守ることに繋がると信じて、今日も1ミリの狂いも許さない真剣勝負で現場に向かっています。
リフォームドアの現場で職人が語る心得